哲学史の寄与 Antognazza, “The Benefit to Philosophy of the Study of Its History"

  • Maria Rosa Antognazza, “The Benefit to Philosophy of the Study of Its History,” British Journal for the History of Philosophy, online first, 2014.

 哲学史を学べば哲学するにもいいことがあるよという主張を三つの事例を通じて正当化しようとする論考である。最初の事例はゲティア問題にかかわる。ゲティアの論文により、知識は正当化された信念であるプラトン以来の前提が壊されたとしばしば言われる。しかしそのような前提はプラトンでも、スコラ学でも、17世紀哲学でも主流ではなかった。かつて考えられていた知識の議論を歪んだかたちで理解してしまうことは、そこから現在の知識の条件をめぐる混迷した議論への代替案をとりだす可能性も閉ざしてしまう。アナクロニズムは危ないというわけだ。第二の事例はライプニッツに関わる。ライプニッツは最終的に力の一元論を提唱し、質料を非存在とまでみなすようになった。そこには現在の考えとは違うものの、一貫した思考の体系を見ることができる。これもまたいまとは違うふうに考える可能性を与えてくれる。最後の事例もライプニッツである。90年代中頃より、ライプニッツの思想における神学的考察がはたした重要性が重要視されるようになってきた(受肉、三位一体といった問題)。もし卓越した精神の思考の道筋をたどることから哲学が学ぶことがあるならば、そのような果実を得るためにはたとえばかつて神学的問題が有していた歴史的な意味を理解しようとつとめねばならない。著者の主張は要するに二点である。第一にいまとは別様に考えるためにまず哲学史は有用である。第二にいまとは別様に考えていた天才たちの思索に学ぶためにも歴史的視点が必要である。

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