経団連ビジョン、「希望の国、日本」


 日本経団連日本経済団体連合会)が、今後10年の将来構想をまとめたビジョンをまとめました。

経団連ビジョン「希望の国、日本」 (2007-01-01)で読むことができます。
年頭所感/日本経団連会長・御手洗冨士夫−「希望の国、日本」の実現に向けて

 このビジョン、その名も、「希望の国、日本」。

 いや表題からして気合が入っていますね。某美しい国とも相通ずるものがあるそうです*1

 希望の国には次のような定義が与えられています。

われわれがめざす「希望の国」とは、だれしもが、「今日より明日が、明日より明後日」がより良くなるという希望のもとに、気概を持って挑戦していく国だと考えます。(上記年頭所感より引用)

 「序」に書かれている目標も遠大です。

希望なき人々に希望を与え、夢を実現する道筋を、今後の検証も可能な形で記すことが本ビジョンのねらいである。経団連会員の経営者、従業員や、政界、学会、官界のみならず、できるだけ多くの国民に、本ビジョンをご一読いただき、「希望の国」の実現のために、ともに行動していただくことを心から望んでやまない。(序)

 できるだけ多くの国民に読んでほしいそうです。確かにそうですよね、ビジョンなんですから、多くの国民に共有してもらわないと。当然のことです。

 ところでこの文書のPDFが置いてある場所には次のように書かれています。

全文のPDF版が閲覧いただけます
(印刷は出来ません/冊子版が後日発売される予定です)

( ゚д゚)

(つд⊂)ゴシゴシ

(;゚д゚)

ちょ、紙で読むためにはお金払わないといけないの?印刷させてくれー。

レーガンモデルの採用

 このビジョンの根底には、現在の経団連の会長である御手洗氏の米国居住体験があるようです。

 たとえばビジョンの序には、米国滞在中の御手洗氏にとって、「最も印象深かったのは、1981年のレーガン大統領(1981-89)の登場」であったとあり、さらに次のように続けられています。

深刻な失業と物価上昇にあえぐ米国民にとって、レーガン大統領が掲げた「強いアメリカの復興」のメッセージは、暗闇に差し込む一条の光だった。人々はレーガン大統領に夢に力づけられ、再起を誓った。(序)

 そして、レーガン大統領ととそれに続く(父)ブッシュ大統領によって実施された様々な施策によって、アメリカのひとびとの「夢は現実に変わって」いったと書かれています。

 このようなアメリカの経験は、日本にとっても示唆に富んでいるそうです。

この経験は示唆に富んでいる。日本における「官から民へ」「国から地方へ」を旗印とした構造改革は、疲弊した枠組みを破壊し、力強い日本を再生する夢を与えた。そして不良債権をはじめ経済面では過去の負債の処理がようやく一段落した今、求められているのは、新しい経済社会を想像していく確かな地図ではないかと思う。(序)

 いつのまにか私たちには夢が与えられていたそうです。それはともかく、以上から察するに御手洗氏によってまとめられたこのビジョンの意図するところは、レーガンが行った政策を日本向けにアレンジして持ち込むことであると言えそうです。

 私はレーガンやブッシュの経済政策については何も知らないので、それが何を意味しているのかは分かりません。

教育再生

 「希望の国」の実現のためには、「教育や政治・憲法などをイノベートしていくことも欠かせ」ません(77ページ)。とろろで、このビジョンではイノベートが合計3回、イノベーションは合計36回使われています。

 そんなことはどうでもよくて、現在の日本の公教育の質が低下していることが問題なのです。資源がない日本では優秀な人材の育成が必須であるにも関わらず、公徳心とは無縁の自己中心的な考え方が蔓延しています。

 このような状況を変え、国民が公徳心を持つようになるためにはどうすればよいか。答えは簡単です。国民が愛国心を持つようにすればよいのです。なぜってそれは…

美しい薔薇が健やかな枝に咲くように、美徳や公徳心は愛国心という肥沃な大地から萌え出る。(79ページ)

 萌えますた。

 しかし愛国心を推奨するからといって、経団連が侵略や軍国主義を賛美しているわけでは決してありません。

しかし、愛国心は、侵略や軍国主義とは無縁である。むしろ、諸国民が、健全な愛国心を持ち、他国の国民と対等に接し、協力・強調することが正義と秩序を基調とする国際平和につながる。(80-81ページ)

 つらい道のりだって愛国心があれば乗り切れちゃいます。

愛国心は、改革を徹底していく前提でもある。これからわれわれが進む道は決して平坦ではない。石くれやいばらも多く、痛みも覚悟しなければならない。国民に国を愛する心がなければ、「希望の国」に至る道筋を歩み続けることはできない。(81ページ)

 そして10年後の希望の国では、「社会のあらゆる場面において、ひとびとの公徳心が高まっている(81ページ)」のです。

 簡単にまとめてしまえば、愛国心と公徳心を備えた国民がたくさんいれば、国際平和の実現に寄与し、さらにはつらい状況も乗り切れて希望の国に至るというわけです。