- 作者: 歌野晶午
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/05/01
- メディア: 文庫
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新幹線の中で読みました。うーん、このトリックは予想していなかったです。確かに最後にあっと言わせられました。ただ結末の意外性は見事だとしても、それに至るまでの展開は特に先を読みたいと思わせてくれるものはなかったです。page-turnerとは言い難い。だから、ミステリーの出来としては疑問符がつくと思います。あと「補遺」は蛇足だろ。
ところで、推理小説やミステリーというのは叙述の形式として大きな力を持っていますよね。人に先を読ませずにはいられないという。文体に難があっても、真相を知りたいという気持ちからページをめくってしまいます。
この力強さは、例えば村上春樹が長編小説を書くときの入れ物として、レイモンド・チャンドラー風のハードボイルド小説を採用していることにも現れているかと思います。最近では西尾維新の作品も一応推理ものという形態を取っていますしね。村上にしても西尾にしても中身は(乱暴にまとめてしまうと)キャラクター小説なので、人に読ませる形式としてミステリー的な枠組みを援用しているのでしょう。
で、このような力強さを学術論文の執筆の際にも応用できればいいし、した方がよいよとアドバイスはもらっているのですが、これは実践するにはなかなかむつかしいものがあります。もちろんまずは中身がないと話にならないわけですが。