本間、読書して学ぶベークマン

  • 本間栄男、「読書して学ぶベークマン 独学者の学び」、『科学史研究』、第47巻(2008年)、140-149。

 東京に戻ったところポストに『科学史研究』の最新号が入っていました。この論文はそこに収録されていたものです。ネーデルラントのイサーク・ベークマン(1588-1637)が、医学博士号を取得するためにどのような書物をどのように読んだかが論じられています。

 個人的に興味深かったのは、ド・ヴァールトの手になるベークマンの『日記』編集の問題点を指摘している箇所です。現在私たちが読むことのできる『日記』は、ド・ヴァールトによって注と索引が完備され非常に使いやすいものになっています。しかし、この論文を読むと彼の編集に問題があったことがわかってきます。

 数学的諸原理と技術の他に、ベークマンが医学に関心を持ち始めたのは錬金術へと関心を寄せた時期とほぼ重なる(1613年頃)。錬金術に関しては、数ある錬金術書からフランス人医化学者クェルケタヌス(Josephus Quercetanus (Joseph Duchesne), c1544-1609)の著作を好んで読み、抜粋も残している(刊行されている『日記』には収録されていない)。

 [ベークマンは]フェルネルに関しては抜粋を残していたが、それは刊行された日記には含まれていない。編者のド・ヴァールトが、ベークマンのオリジナリティがないと判断した(残念ながらこの判断は間違っている)ための脱落であり(後略)。

 ただ本論文でもド・ヴァールトによって落とされたクェルケタヌスやフェルネルに関係する日記の部分の見当はなされておらず、残された課題となっています。