堕落した天使 - エノク書の受容 等

Fallen Angels and the History of Judaism and Christianity: The Reception of Enochic Literature

Fallen Angels and the History of Judaism and Christianity: The Reception of Enochic Literature

  • Annette Yoshiko Reed, Fallen Angels and the History of Judaism and Christianity: The Reception of Enochic Literature (Cambridge: Cambridge University Press, 2005).

 エノク書の受容についての研究です。取り急ぎ教父に関する部分だけ読みました(160-189)。エノク書では天使の堕落という挿話が語られます。初期教父たちの特徴は、この挿話をキリスト教ギリシア・ローマ文化とのあいだの関係を明らかにするという目的で使用した点にあったとReedは論じます。

 時代が下るにつれてエノク書の挿話は徐々に用いられなくなっていきます。エノク書が用いられなくなった原因は、キリスト教が帝国で公認され、国教になったことにあったといいます。異教とキリスト教側の関係を明確にすることよりも、正典を限定する方向に議論の力点が移行したのです。

  • 「延長と空虚に関するクリュシッポスの理論」 Brad Inwood, "Chrysippus on Extention and the Void", Revue internationale de philosophie 3 (1991): 245-66.

 クリュシッポスは宇宙の外部に無限の広さを持つ空虚を想定しなかった。彼が想定したのは無限定という意味での空虚であった。エピクロス派のように本当に空間的に無限の広さを持つ空虚が考えられていたわけではない。

 という話。Inwoodの議論が妥当かどうかは判断できず。古代の空間論とか存在論一般とかに興味がある人はどうぞ。

  • クレオメデスとストア派の空虚概念」 Robert B. Todd, "Cleomedes and the Stoic Concept of the Void", Apeiron 16 (1982): 129-36.

 タイトルどおり。空虚に関する議論が私の関心からは外れていることが確認できたくらい。

  • 『永遠の光』 Franz Cumont, Lux perpetua (Paris, 1949), 164-70.

 セネカの来世観についての箇所。驚くべきことにキュモンはリプシウスを読んでいます。より詳しくは Pierre Benoît, "Les idées de Sénèque sur l'au-delà", Revue des sciences philosophiques et théologiques 32 (1948): 38-52を見るとよいようです。