11月の中間選挙でイスラム教徒として史上初めて下院議員に当選したキース・エリソン氏（民主党、中西部ミネソタ州）が来年１月に予定される宣誓の際、イスラム教の聖典コーランを手にすると表明、波紋を広げている。
より詳しくは
http://seijiwatch.blog45.fc2.com/blog-entry-464.html
アメリカのことをよく知らない私からすると、別にコーランでも問題はないような気がします。というより、そもそも宣誓するときというのは何か宗教書を持っていないといけないのでしょうか。「何も持たないで宣誓する」という議員が出てきたら、それはそれで問題になるのか、それは問題なく受容されるのか。このあたりからしてよく分かりません。
Wikipedia内のDennis Pragerの項目（下記参照）によると、
Members of Congress do not actually use the Bible - or any other religious text - during official swearing-in ceremonies. The use of the Bible occurs at "ceremonial" swearing-in for photo opportunities.
だそうです。要するに記念撮影をするときだけ聖書に手を置いて宣誓する慣習があるそうです。アメリカはキリスト教国だ、と断言しているブログもありますけど、少なくとも宣誓の中身には、宗教的なことは一切書かれて入ません*1。
この問題について注目を集めているのがDennis Prager という人が書いたコラムです。この人については、Wikipediaにもなぜか記述が。内容を見る限りでは主張はかなり極端。
http://en.wikipedia.org/wiki/Dennis_Prager
宣誓問題に関するこの人のコラム。
Pragerによるとコーランに手を置いて宣誓することをエリソンに許すべきではないそうです。なぜなら、そのような行動は思い上がりであり、この思い上がりこそ文化多元主義を体現したものだからです。
このような文化多元主義、自由主義者、左翼の主張が認められないのは、それがアメリカ文明を破壊してしまうからだそうです。なぜなら、すべての公務員が聖書という一つの文書に手を置いて宣誓を行うとき、彼らはアメリカの文明の根底にあり、アメリカを統合している何らかの価値システムを肯定しているからです。エリソンが聖書以外の文書を用いて宣誓を行えば、アメリカを統合しているこのような価値システムは破壊されてしまうことになります。それは9.11事件でテロリストが行った以上の破壊行為だそうです。
これもすごいのですけど、もっとすごい箇所があって、
〔エリソンの主張を支持している〕彼らは人種差別主義者に、ナチスのバイブルであるヒトラーの『わが闘争』を宣誓のさいに選択することを許容するのか？許さない？なぜ許さないのだ？彼が一番好む書物を選ぶというエリソンの権利を弁護しているものたちは、どのようなことを根拠にして、公務員として選ばれた人種差別主義者の権利を否定するというのだろうか。
これはいくらなんでも極端すぎで、このようなことを言い出すとかえって問題がこじれてしまうような気がするのですが…。ただしPragerもエリソンがコーランで宣誓を行ったからといって、それによって議員であることを禁じられるべきではないとは考えているようです*2。ちなみにPragerはユダヤ人。
*1:http://en.wikipedia.org/wiki/Oath "The Senators and Representatives before mentioned, and the members of the several state legislatures, and all executive and judicial officers, both of the United States and of the several states, shall be bound by oath or affirmation, to support this Constitution; but no religious test shall ever be required as a qualification to any office or public trust under the United States." というのが憲法上の規定だそうです。
*2:http://www.kansascity.com/mld/kansascity/news/politics/16144123.htm
