キケローの伝記

キケロ―もうひとつのローマ史

キケロ―もうひとつのローマ史

キケロー伝の試み―キケローとその時代

キケロー伝の試み―キケローとその時代

 今年はキケローの伝記が二つ日本語で出版されました。最初の方の著者であるアントニーエヴァリットは、他にアウグストゥスの伝記も書いているようです。

Augustus: The Life of Rome's First Emperor

Augustus: The Life of Rome's First Emperor

 それでこのアウグストゥスの伝記なのですが、ちょっと信じられないことが出版社からの紹介文に書かれています。

British author Everitt begins his biography of Augustus (63 B.C.– A.D. 14) with a novelistic reconstruction of the Roman emperor's last days, offering a new spin on his murder at the hands of his wife, Livia. Everitt presents the death as an assisted suicide intended to speed and secure the transition of imperial power to his stepson Tiberius.

イギリス人の著者であるエヴァリットは、アウグストゥスの伝記を小説のようにはじめる。描かれるのはローマ皇帝最後の日である。そこでエヴァリットは、アウグストゥスが彼の妻であるリウィアによって殺害されたという解釈を提示する。著者によれば、アウグストゥスの死はリウィアの助けを借りた自殺であった。そうすることでアウグストゥスは、義理の息子であるティベリウスへの帝国の権力の移譲を速やかにかつ安全に行おうとしたのである。

 まじで??にわかには信じがたいなぁ。
 アウグストゥスに関する資料といえばスエトニウスくらいしかまとまったものは残されていませんが、その最後の箇所を見てみると次のようにありました。

Omnibus deinde dimissis, dum advenientes ab urbe de Drusi filia aegra interrogat, repente in osculis Liviae et in hac voce defecit: "Livia, nostri coniugii memor vive, ac vale!" sortitus exitum facilem et qualem semper optaverat. (Suetonius, Vita divi Augusti, 99.)

それからすべての者たちを下がらせて、ローマから来た者たちに病をえているドゥルススの娘について尋ねているあいだに、リウィアと口付けを交わしつつ次のように言ってとつぜん息絶えた。「リウィアよ、私たちの結婚を忘れないで生きてくれ。さようなら」。そして彼が常日頃から望んでいたような安らかな最後を迎えたのである。

 ここにリウィアに助けを借りた自殺を読み込むわけですか。そりゃ確かにそれができるとしたらリウィアくらいしかいませんけど…。