強姦、強制わいせつの被害件数について

 「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」関係の社説がでました。世界日報です。

世界日報:児童ポルノ漫画/制作そのものを禁止せよ(社説)

十三歳未満が被害に遭った性犯罪は、「強制わいせつ」だけでも昨年一年間で約千四百件も起きている。「児童ポルノ」と定義してもおかしくないわいせつ漫画が、小学生さえも性行為の対象と見る異常な風潮を生み、子供への性犯罪を増やしているのは間違いない

 間違いないそうです。制作そのものを禁止とはおだやかではありません。

 とりあえず本当に子供への性犯罪が増えているかどうかを確認するために、『平成17年版 犯罪白書』を見て、強姦と強制わいせつの発生件数を調べてみました。

http://www.moj.go.jp/HOUSO/hakusho2.html

 すると確かに強姦と強制わいせつの発生件数そのものは増えているのです。このあたりのことに関心がおありの人には周知のことなのでしょうが、私は今日までまったく知りませんでした。

 いちおう白書にある表を写経すると次のようになります。なお、表に登場する被害発生率というのは人口10万人あたりの被害件数の比率を指します。

強姦

年次 強姦被害件数 強姦被害発生率
7 1,500 2.3
8 1,483 2.3
9 1,657 2.6
10 1,873 2.9
11 1,857 2.9
12 2,260 3.5
13 2,228 3.4
14 2,357 3.6
15 2,472 3.8
16 2,176 3.3

強制わいせつ

年次 強制わいせつ被害件数(女子) 強制わいせつ(男子)
7 3,529 115
8 3,853 172
9 4,177 221
10 4,105 146
11 5,205 141
12 7,122 290
13 9,044 282
14 9,225 251
15 9,729 300
16 8,917 267

http://hakusyo1.moj.go.jp/nss/list_body?NSS_BKID=51&HLANG=&NSS_LEVSTR=2_3_1_4_0#を元に作成。)

 このような現状に対する『犯罪白書』のコメントは次のとおり。

3 強姦・強制わいせつ

 強姦の認知件数は,平成8年までおおむね横ばい傾向にあったところ,9年以降増加傾向に転じ,15年には昭和50年代後半以降で最多の2,472件となったが,16年は2,176件(前年比296件(12.0%)減)であった。

 検挙率は,かつては90%前後を誇ったが,11年以降低下し,14年には62.3%と戦後最低を記録した。その後は横ばい傾向となり,16年は64.5%(同1.0ポイント上昇)であった。

 強制わいせつの認知件数は,平成11年以降急増し,15年には戦後最多の1万29件となった。16年は,9,184件(前年比845件(8.4%)減)となったが,なお高水準にある。

 検挙率は,11年以降急低下し,14 年には35.5%と戦後最低を記録した。その後は横ばい傾向となり,16年は39.8%(同1.0ポイント上昇)となった。

 重大悪質事案も発生していることから,性犯罪者の実態把握と処遇の在り方は,緊急の重要課題といえよう。

 問題はこのような被害件数の増加のうちのどれだけが純粋な意味での増加で、どれだけがこれまでは明るみに出なかったようなものが明るみに出るようになったことの結果なのかという点です。

 またこのうちのどれだけが子供(18歳以下の青少年と定義される)を被害者としたものなのかどうかも。

 さらにその中での純粋な意味での増加が、わいせつ漫画とどのような関係にあるかも検討しなければなりません。

 とはいえ、強姦や強制わいせつの被害件数が増えていることだけは間違いないようです。

〔付記〕
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