ラブ・メランコリーと結婚制度

  • 「愛、狂気、社会的階級:16世紀後半と17世紀初頭のフランスとイングランドにおける愛のメランコリー」 Michal Altbauer-Rudnik, "Love, Madness and Social Order: Love Melancholy in France and England in the Late Sixteenth and Early Seventeenth Centuries," Gesnerus 63 (2006), 33-45.

 友人で卒業論文のテーマとして17世紀のメランコリーを取り上げたいという人がいるので読みました。その人の関心は特に恋愛とメランコリーについてなので、とりあえず一番関連していそうなこの論文です。

 成就しない恋愛関係が原因でメランコリー状態に陥るという症状は、実は当時の結婚制度と密接に関係する形で形成された。これが主張の核です。当時のフランスやイギリスの上流階級では、結婚の際に両親の許可が必要とされました。この両親の意向と恋人たちの意向が衝突することからメランコリーが起こるということです。

 恋愛という普遍的な現象から出発して、これまた普遍的な問題として語られがちな恋愛にまつわるメランコリー。当時の結婚制度徒という社会的背景を用いることで、Altbauer-Rudnikはこのメランコリーをより歴史的な視点からとらえることができるのではないかと提起しています。

 ただあまりいい論文とはいえないような…。

 とりあえずラブ・メランコリーについての基本文献は以下の二つのようです。

  • Lawrence Babb, The Elizabethan Malady: A Study of Melancholia in English Literature from 1580 to 1642 (East Lansing: Michigan-State University Press, 1951). webcat
  • Stanley W. Jackson, Melancholia and Depression: From Hippocratic Times to Modern Times (New Haven: Yale University Press, 1986). webcat

 他にもこんな論文。

  • Peter Thoohey, "Love, Lovesickness and Melancholia," Illinois Classical Studies 17 (1992):265-86.