13世紀における新しいアウグスティヌス Weisheipl, "Albertus Magnus and Universal Hylomorphism"

  • James A. Weisheipl, "Albertus Magnus and Universal Hylomorphism: Avicebron," in Albert the Great: Commemorative Essays, ed. Francis J. Kovach and Robert W. Shahan (Norman: University of Oklahoma Press, 1980), 239-260.

 13世紀にはアウグスティヌス主義があったと言われる。これには五つの特徴が認められる。主意主義、普遍的質料形相論、全被造物における複数の形相、神の照明に関するアヴィセンナ的理解、そして霊魂とその能力の同一視である。この種の学説をジョン・ペカムはアウグスティヌスに由来する古い学説とし、これがこの20年のあいだに導入された新規な学説によっておびやかされていると記した。この新規な学説とはトマス・アクィナスのそれを指していた。このようなアクィナスへの反発が、1277年の譴責には反映されている。

 ペカムは新規なアクィナスの学説と、古いアウグスティヌス主義を対比させている。しかし彼がアウグスティヌスの学説とみなしたものは、じつは13世紀初頭にラテン中世世界で現れたものであった。その起源はユダヤ人哲学者アヴィケブロンにある。彼の著作はトレドにおいてドミニコ会士グンディサリヌスによって12世紀後半にラテン語訳された。アヴィケブロンは神からの必然的な流出により世界が成立するというアラビア哲学の学説に対抗して、神の意志を強調する学説を唱えた。この学説がパリにおいて1220年ごろにオーベルニュのグイエルムスらによって支持されることになる(主意主義)。アヴィケブロンの学説のもうひとつの特徴は、その普遍的質料形相論である。これは一者である神はまず最初に全被造物に共有される質料と形相を創造したという考えである。この質料と形相の複合体がまず最初にあり、そこに多様な事物に対応する質料と形相がくわわっていく。この学説をパリ大学フランシスコ会士Odo Rigaudが、ボエティウスによるquod est(本質?)とquo est(esse 存在)の区別と重ね合わせた。この同一視はヘイルズのアレクサンデルによっても1220年代にも支持されていたかもしれない。この普遍的質料形相論は、プラトンの学説に近く、それゆえストア主義的(!)だとアルベルトゥス・マグヌスに解釈され、反駁されていくことになる。普遍的質料形相論の批判は弟子のアクィナスも行った。

 以上からわかるとおり、アクィナスの新規な学説に対置された古きアウグスティヌス主義は、じつはアルベルトゥスやアクィナスよりも一世代前に導入されたものであった。