ストア派が提唱していた宇宙の大燃焼(Ekpyrosis)の理論について文献を集めはじめました。今すぐ必要というわけでもないのですけど、いずれ使うことになるかもしれないので。
資料
基本資料は
- SVF, 1.107-109.
- SVF, 1.510-512.
- SVF, 2.585-632
に収録されています。
クレアンテスについての難解な記述が
SVF, 1.497
にあります。
他にも
SVF, 2.526, 2.1047, 2.1064, 2.1065(セネカ), 2.1068
があります。
研究
- 「初期ストア派自然学での神と質料」 Bethia S. Currie, "God and Matter in Early Stoic Physics" (Ph.D. diss., New School for Social Research, 1971), 73-78, 80-86, 154-65.
- かなり詳しく書いてありますけど、論証はやや頼りない。特にSVF, 2.580の解釈は疑問。
- 「ヘラクレイトスの宇宙生成論と大燃焼理論」 Aryeh Finkelberg, "On Cosmogony and Ecpyrosis in Heraclitus", American Journal of Philology 119 (1998): 195-222.(未見)
- 『ストア派宇宙論の起源』 David E. Hahm, The Origins of Stoic Cosmology (Columbus: Ohio State University Press, 1977), 185-199.
- 「世界の大燃焼と永続する循環についてのストア主義者たちの見解」 A. A. Long, "The Stoics on World-Conflagration and Everlasting Recurrence", in Long, From Epicurus to Epictetus: Studies in Hellenistic and Roman Philosophy (Oxford: Clarendon Press, 2006), 256-82.
- 内容がない。
- 「初期ストア派思想での摂理と宇宙の破壊」 Jaap Mansfeld, "Providence and the Destruction of the Universe in Early Stoic Thought", in Studies in Hellenistic Religions, ed. M. J. Vermaseren (Leiden: Brill, 1979), 129-88; repr. in Mansfeld, Studies in Later Greek Philosophy and Gnosticism (London: Variorum, 1989), 1129-88.
- すべてはここから。
- 「付け加えられた復活 - ストア派の教義のキリスト教的解釈」 Jaap Mansfeld, "Resurrection Added: The Interpretatio Christiana of a Stoic Doctrine", Vigiliae Christianae 37 (1983): 218-233.
- 「クレアンテスが考える大燃焼と神の善」 Ricardo Salles, "'Eκπvρωσiσ and the Goodness of God in Cleanthes", Phronesis 50 (2005): 56-78.
- 神にとって大燃焼は世界を維持するためのやむをえない方策である。これがクレアンテスの主張であったと論じます。話の筋は通っていますけど、残っている資料の性質上完全な論証は無理みたいです。
- 「大年と永遠の反復」 van der Waerden, B. L. "Das grosse Jahr und die ewige Wiederkehr", Hermes 80 (1952): 129-55.
初期ストア派ついてもそうなのですけど、特にセネカが『自然論集』第3巻で展開する大洪水について扱った研究があれば教えてください!>ストア派マニアの人
今のところ、
- 「セネカの『自然論集』での神と人間の知識」 Brad Inwood, "God and Human Knowledge in Seneca's Natural Questions", in Reading Seneca (Clarendon Press: Oxford, 2005), 157-200, esp. 170-174
しか見つけられていません。
大洪水について触れた断片としては次のものがあります。
もしあの将来の人間の世代が、わたしたち一人一人の賞賛を父祖から受け継いで後世の者に絶えることなく伝えたいと望んでも、やはり一定の時期には必然的に襲う大地の洪水や大火のために、わたしたちは、永遠とは言わずとも、長続きする栄光すら得ることはできない。(キケロー、『国家について』第6巻23節)
大地と共に燃えるであろう。大洪水に続いて起こるとストア派が主張する宇宙の大燃焼。(『ルカヌス注解』第7巻813-1152=SVF, 2.608)
あらゆることをできるだけ厳密に理解しようと欲する人々にとっては、悪についての説明は必至のものであるが、その悪は、地上のものを維持したり、あるいは大洪水や大燃焼によって浄化したりする摂理のために、つねに同じところにとどまっていない。
おそらくそれは地上のものだけではなく、宇宙全体のうちにあるものについても同様である。宇宙はそのうちにある悪徳が多量になるときは浄化を必要とするのだから。(オリゲネス『ケルソス論駁』第4巻第64節=SVF, 2.1174)
他にも以下を参照。
- プラトン、『ティマイオス』22B, 23B, 25D.
- アリストテレス、『気象論』352a28-32.
- 「われわれはむしろ、これらすべてのことの原因は、ちょうど毎年の季節の中に冬があるように、或る大きな周期のなかに大きな冬と雨の過剰が定められた時の後に起こることにある、と考えなければならない。しかしこの雨の過剰はいつも同じ場所で起こるのではない、むしろ「デウカリオン時代の大異変」と呼ばれるもののように起こる。
- ウェルギリウス、『アエネーイス』3.414-419.
- オウィディウス、『変身物語』15.290-2.
- ルカヌス、『内乱詩』2.435-6.
- セネカの宇宙の大燃焼理論について
- 『倫理書簡集』第9番第16節。「宇宙が分解して神々が一つに融合し、自然がしばしば途絶するとき、ユッピテルは己に憩い、己の思考に己を委ねる」