Clarke, The Roman Mind - ローマの宗教とストア派についての標準的な見解

The Roman Mind; Studies in the History of Thought from Cicero to Marcus Aurelius

The Roman Mind; Studies in the History of Thought from Cicero to Marcus Aurelius

 歴史家たちはギリシアの哲学には興味を示す一方で、ローマの思想には関心をあまり寄せないという前書きからはじまる本書では、ローマ時代の哲学が当時の政治状況や宗教風俗の問題と関係付けられて論じられます。

 個人的にはストア派哲学と宗教についてどのように書かれているかを調べたくて読みました。著者が考えるローマの宗教というのは、ローマで執り行われていた祭儀を中心とした国家宗教のことです(日本では小堀馨子氏が研究されている分野ですね)。このようなローマの国家宗教にストア派は冷淡であり、伝統的なローマの宗教は哲学からは分離していったというのが著者の主張です。

 またセネカからマルクス・アウレリウスまでのストア派については、体系的な哲学思想というよりも実践的な倫理方面での指南に力点が置かれるようになったと論じています。

 著者の見解は疑いもなく正しいのですけど、ウァッローからセネカへと連なる宗教観については違う方向性からもアプローチできるとは思います。それを実際に行っている研究を探している途中なわけです。