ジャンフランチェスコの古代神学

 ジャンフランチェスコ・ピコ・デラ・ミランドラの古代神学に対する見解を、シュミットやウォーカーの著作に書かれていることからまとめてみると次のようになります。

 まず第一に自らの議論のために古代神学を用いている箇所があります。ジャンフランチェスコにとって、異教の知識はすべて空虚なものです。その代表的なものがアリストテレスの哲学ということになります。たいしてプラトンの哲学はアリストテレスのものよりはましなことがあるものの、その原因はプラトンモーセの書から啓示的真理を一部抜き出しているからです。この議論ではプラトンアリストテレスよりもましであるということの根拠として古代神学が用いられています。

 しかし第二により重要な個所として、古代神学の信念を激しく攻撃する部分があります。ジャンフランチェスコにとって魔術や占星術というものは異教徒の迷信を象徴するものでした。ここで古代神学者として敬意を払われていたオルフェウスらが当時魔術師とみなされることもあったことが重要になります。すなわち、異教の魔術を攻撃するジャンフランチェスコにとって、魔術を実践する古代神学者たちは非難されるべき対象となりました。この結果『事象の予知について』などではオルフェウスやそのほかの古代神学者が攻撃されることになります。

 以上の点からわかるとおり、ジャンフランチェスコにとって、異教の伝統とキリスト教の伝統を混ぜ合わせるような古代神学の信念は許容しがたいものであったことがわかります。時として古代神学の前提を用いることがあるものの、その目的は異教の哲学の価値を貶めるためであり、フィチーノのようにプラトンの哲学とキリスト教の哲学の本質的調和を説くためではありませんでした。同じような相違がアリストテレスキリスト教の調和を説くスカリゲルとのあいだにも認められます。