Craig, Rethinking Renaissance Averroism

  • Martin Craig, "Rethinking Renaissance Averroism," Intellectual History Review 17 (2007): 3-19.

 すでに2年ほど前の記事で触れている論文です。今頃になって読みました。これは古典的論文としてこれから長いあいだ引かれることになるのではないでしょうか。

 ルナン以来の西洋アヴェロエス主義研究の問題点が指摘されています。曰く、知性単一説やパドヴァの方法論に関心が集中した結果、アヴェロエスの注釈が持った本当のインパクトは十分に理解されていない。

 論文の後半部ではトマスから17世紀前半までに「アヴェロエス主義者」という言葉がどのような意味で理解されていたかが解説されています。トマスは受動理性単一説を唱える者をアヴェロエス主義者と呼びました。ルルスによって一般的に異端的学説を唱える人物をさす言葉に用法が拡大され、フィチーノルネサンス人文主義者のあいだでキリスト教の教えに反するアリストテレス主義の一形態として理解されるようになります。その一方でザバレラのようにアヴェロエス主義者という言葉に非難の意味を込めずに、単に強引な解釈をしばしばする者たちを指すために使う人物もいました。17世紀のカベオになるといかなる否定的な意味も込めずに単純にアヴェロエスに基づいてアリストテレスを解釈する人物する人物としてこの言葉が用いられるようになります。