危険な物質主義の系譜: アレクサンドロス、アヴェロエス、アルベルトゥス
- 作者: ヒロ・ヒライ,アダム・タカハシ
- 発売日: 2015/01/13
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表記の二人によるラジオ放送を増補改訂して活字化したものである。博士論文を完成させたアダム・タカハシさんが、調査・執筆の過程のなかで、発見を積み重ね、それらの発見から一つのきわめて重要な伝統の存在が浮かびあがらせていくさまがあますところなく語られている。中世の神学者であるアルベルトゥス・マグヌスからアラビアの注釈家であるアヴェロエスへ、アヴェロエスから古代ギリシアの注釈家にしてすべてのはじまりであるアレクサンドロスへ、そしてアレクサンドロスの著作にある天空=神という衝撃的な理論を起点にして神学とはなにか、西洋文明の起源をどこにみるか、果ては過去を理解し、それを現代に伝えるとはいかなる営みであるのかにまで説きおよぶのである。短く、またとても読みやすい対談であるので、その内容をここで紹介することはしない。ぜひ全体に目を通してほしい。一つだけタカハシさんによる核心的な発言を引いておこう。
放談風に喩えていうと(笑)、E・パノフスキーが『ゴシック建築とスコラ学』で述べたように、トマス・アクィナスなどのスコラ学におけるアリストテレスの思想というのは、キリスト教と融合したゴシック建築の大聖堂みたいなものです。この場合、アリストテレスの神はキリスト教の神と調和すると解釈されます。しかし、スコラ学以前のアリストテレス主義の伝統では、キリスト教の神ではなく、太陽を中心とした天空を神と崇めたのであり、その体系は太陽神殿と比されるわけです。だから、アヴェロエスやアレクサンドロスによって解釈されたアリストテレスを受けいれるかどうかというのは、たんにアリストテレスのテクストの解釈が正しいか誤りかという話ではなくて、キリスト教の神なのか、天空が神なのかという「神々の争い」とでもいえるようなものだったのです。
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