雑誌『科学技術史』第11号

 日本科学技術史学会が発行している『科学技術史』の最新号である第11巻(2010年)が刷りあがりました。会員の人の手元に届くのはもう少し先かも知れませんが、研究室にはいち早く入荷されたので目次を掲載します。

論文

  • 高橋雄造 濱地常康の『ラヂオ』から『無線と実験』へ:日本最初のラジオ雑誌 1-36頁
  • Jonathan Coopersmith Creating Fax Standards: Technology Red in Tooth and Claw? 37-65頁
  • 小林啓スケ[示に右] 第二次世界大戦時に於けるハイゼンベルク・ヴィルツの未臨界実験理論の正当性 67-93頁

書評

  • 塚原修一 橋本鉱市『専門職養成の政策過程:戦後日本の医師数をめぐって』 95-98頁

 編集後記では事業仕分けについて触れたあとに次のように書かれています。

 科学技術に対して社会や国家が何を期待することができ、またどのような支援を行えばよいのか。このような問題に対して、明確な根拠と基準をもって解答を与える試みの必要性は、専門家の間ではそれなりに意識されてきていたように思われます。しかし、今後は、国家の財政状況が逼迫するなかで、科学技術に振り向けるための予算を、他の項目に向ける予算と比較しながら検討するといった作業が、多くの非専門家の面前でなされていくこととなります。ある種の権威を引き合いに出してこと足れりとする態度では不十分であることはもちろんですが、文化や教育の問題にも深い関わりをもつ科学技術について、経済的な尺度のみを用いて議論を行うことも不適切でしょう。

 今後も本誌では、多くは歴史に材料を求めることになるものとは思いますが、科学技術が社会の中で果たす役割について、多種多様な観点から検討を加えた論攷を掲載していく所存でおります。よろしくご支援くださいますようお願い申し上げます。