ハーヴィ以降の発生論 Bertoloni Meli, Mechanism, Experiment, Disease. #2

Mechanism, Experiment, Disease: Marcello Malpighi and Seventeenth-Century Anatomy

Mechanism, Experiment, Disease: Marcello Malpighi and Seventeenth-Century Anatomy

  • Domenico Bertoloni Meli, Mechanism, Experiment, Disease: Marcello Malpighi and Seventeenth-Century Anatomy (Baltimore: Johns Hopkins University Press, 2011), 208–33.

 Bertoloni Meliの新著から発生の問題を扱った章を読みました。『動物発生論』(ロンドン、1651年)でウィリアム・ハーヴィは発生において身体の各部位は段階を追って形成されるという後成説を唱えました。ハーヴィと異なり発生の過程を完全に機械的に説明しようとしたデカルトもまた、発生を段階を踏んだ部位の形成とみなす点では同じでした。一方グラーフ(Reinier de Graaf, 1641–73)は1672年の著作において、哺乳類もまた他の動物と同じように卵が存在することを突き止めました。こうして子宮において精液により動物が形作られるというアリストテレスやハーヴィの考え方はしりぞけられることになります。77年にはレーウェンフク(Antonie van Leeuwenhoek, 1632–1723)が精液内にある精子(彼はこれを「生きている小さな動物 animalcula viva」と呼んだ)を発見しました。生成の過程については、ハーヴィやデカルトと異なり、各部位はあらかじめ形成されており、発生の過程ではその増大が起こるのみという前成説が機械論者の支持を集めました。機械論的な作用により部位の形成を説明することは困難であったから、それならあらかじめ形成されていることにしようというわけです。この学説の支持者にはスワンメルダム(Jan Swammerdam, 1637–80)がいました。マルピーギ(Marcello Malpighi, 1628–94)もまたニワトリの卵の観察から、動物もまた植物と同じようにその体の部位が予め形成されているという前成説を支持しました。彼は発生に何らかの形成力が関与すると述べています。この形成力をマルピーギは、ガレノスが想定したような非物質的な力ではなく、何らかの機械的に説明できる物質的な力能であるとみなしていました。このような形成力の着想はロバート・ボイルから来ていると考えられます。