カルダーノの知性論 Giglioni, "The Eternal Return of the Same Intellects"

  • Guido Giglioni, "The Eternal Return of the Same Intellects: A New Edition of Girolamo Cardano's De immortalitate animorum," Bruniana & Campanelliana 13 (2007): 177–83.

 カルダーノ『霊魂の不死性について』の新たな校訂版の刊行に寄せて書かれた論文です。鋭い直観が示されています。

 カルダーノは『霊魂の不死性について』のなかで、アリストテレスの正しい解釈として、霊魂の輪廻転生説を提唱しています。人間には身体の形相である知的霊魂があり、これは肉体の消滅とともに消失する。これにたいして知的活動をあたかも補助するかのように人間に宿る能動知性というものがあり、これは全世界に浸透する力であって、肉体の消滅とともに滅びることはないといいます。ただし後者の能動知性は肉体から一度離れると生前の記憶を失うとされます。この考え方に対して『テオノストン』という著作の第5巻では、人間の核をなす自己はその固有性を維持したまま存続すると言われます。

 これらの霊魂論は時としてアリストテレスに依拠して行われているものの、カルダーノの議論の基調は新プラトン主義であり、この土台にアリストテレスを埋め込むという構造を持っています(基調にアリストテレスがあるのではない)。この解釈の重要な典拠となったのが、テオフラストスの霊魂論でした。テミスティオス、シンプリキオス、リュディアのプリスキアノスらは、テオフラストスを知性のプラトン主義的な解釈を正当化するために引いていました。カルダーノはこれを利用して、プラトン主義的な知性論にアリストテレス主義と調停しようとしたのです。しかし同時にテオフラストスの知性論はアヴェロエスによっても引用・解釈されており、カルダーノの知的霊魂論はこのアヴェロエスの読みにも負う部分があります。

メモ

 新プラトン主義が基調にあるとはいっても知性を熱であるとする大前提はアヴェロエス(究極的にはアリストテレス『動物発生論』)から引き出されていると考えなければならない。