新しい中級者向け『アエネイス』注解 Ganiban, ed. Vergil, Aeneid: Book 1–6

Vergil Aeneid 1-6 (The Focus Vergil Aeneid Commentaries)

Vergil Aeneid 1-6 (The Focus Vergil Aeneid Commentaries)

  • Randall T. Ganiban, ed., Vergil, Aeneid: Book 1–6 (Newburyport, MA: Focus, 2012).

 ウェルギリウス『アエネイス』への中級者向け注釈があたらしく出された。同レベルの読者を対象するT. E. Pageによる名高い注釈書(1894, 1900)を置きかえるべくつくられたものだ。全体はイントロダクション、テキスト、注釈、付録(韻律解説)、用語集、文献表、索引からなっている。ページを繰ってみた印象では、最新の研究成果が随所に反映されていると感じる(特にイントロダクション)。

 実はこれにはもとになる別冊がある。たとえば1歌ならこれ。

Vergil Aeneid Book 1

Vergil Aeneid Book 1

 この1歌から6歌までをまとめて、調整をほどこしたのがこの注釈書である。分冊ヴァージョンをアマゾン・コムの中身検索でのぞいてみると、テキストと注釈が同じページに収録されているのがわかる。二つが分けられている合本ヴァージョンよりも見やすい。また基本的な文法の解説や、英語訳の補足の面で、分冊のほうが合本より少しばかり丁寧である。合本の注釈はこの点で分冊版の縮約になっている。縮約されたのはわずかであるものの、文法の学習を終えたばかりの学習者にとって必要な説明が切られている場合もあるので、『アエネイス』を独習したい場合は、分冊ヴァージョンを購入した方がよいだろう(語彙集も入っているらしい)。合本ヴァージョンの利点は安いことと、最新の文献表が付されている点だろうか(2012年までの情報が入っている)。

 中級者と言ってもピンからキリまである。この注釈は分冊にしろ合本にしろ、文法学習を終えたばかりの学習者が一人で使うにはややハードルが高いように感じた。まずはJordanによる下記の2冊を使ってから、こちらに移るとよい。Jordanは本当に丁寧に文法事項を説明している。

Virgil: Aeneid II (Bcp Latin Texts)

Virgil: Aeneid II (Bcp Latin Texts)

Virgil: Aeneid X (Latin Texts)

Virgil: Aeneid X (Latin Texts)