科学革命再考

Rethinking Scientific Revolution

Rethinking Scientific Revolution

に収録されている
Margalet J. Osler, The Canonical Imperative; Rethinking the Scientific Revolution, 3-24を読みました。
 本書に関する情報はここで、目次はこちらで見ることができます。

 コペルニクスからニュートンに至るまでの約200年間に、西洋の自然観がに根本的な変化が生じたのではないか、それはアリストテレス的な世界観から近代科学の世界観への変化ではないか、ではその変化のことをある種の革命、つまり科学革命としてとらえるのが有効ではないか、といった問題意識がかつて科学史では主流でした。
 このような考えは、数学・天文学・物理学を偏重し同時代の医学、化学、自然誌(natural history)の状況を考慮していなかったため、現在ではかなりの修正が加えられています。
 結局、コペルニクスからニュートンに至るまでの間に、西洋の自然観に巨大な変化があったことは間違いないが、それは一直線のものでもないし、単線でもないし、20世紀の私たちが近代科学と考えているものに直結しているわけではない、といったところに落ち着きつつあります。
 とはいえ、科学革命、といういわば「大きな絵Big Picture」が歴史のとらえ方として人の心をつかむものがあったことも事実だと思います。アリストテレスの釈義の泥沼にとらわれていた中世的な世界観が、コペルニクスガリレオといった人物によって乗り越えられ、アイザック・ニュートンの『プリンキピア』でクライマックスを迎え、中世は名実共に打ち捨てられる。そして、ここにこそ私たちが現在有している近代科学の起源があるのだ、という考えは(単純すぎるからこそ)魅力的であるのは否定できません。
 この魅力的ではあるけれど粗雑な考えを修正したあとに、科学史というディシプリンディシプリンとして確立してしまった)がそれに代わる魅力的な絵を提示できているかといえば疑問です。細部の絵は精密になりましたが、外部に訴える力は減退しているように思えます。