増補 サブカルチャー神話解体―少女・音楽・マンガ・性の変容と現在 (ちくま文庫)
- 作者: 宮台真司,石原英樹,大塚明子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/02/01
- メディア: 文庫
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単行本版発売から14年の月日を経て、ついに『サブカルチャー神話解体』が発売されました。文庫化を待っていた人も多いのではないでしょうか。
単行本版からの変更点
文庫化ということで、今回あらためて『サブカルチャー神話解体』を読んでみたのですが、いや、やはりこれは歴史に残る著作だと思います。本書のすごみは、大規模な調査に基づいて得られたデータを理論枠組みに当てはめることによって、非常に抽象度の高い議論を可能にしているところにあります。そうすることで、単にサブカルチャーの歴史をたどるだけではなく、分析対象となったサブカルチャーが現れた時代がどのような時代であったのかということを明らかにすることが目指されています。
ただ、独特の理論をもとした抽象的な術語によって、分野横断的に議論が行われるために、『サブカルチャー神話解体』が与える印象は、類書が与えるそれとは全く別物になっています。正直、最初見たときには度肝を抜かれました。というか、あきれたと言った方がいいかもしれません。
社会システム理論、予期理論的人格システム類型論。ここまでなら、よく分からないけど、とにかく学術的な用語なのだな、ということで了解できるのです。しかし、これってあたし!、相互浸透、バンカラ風さわやか人間、関係の偶発性、無害な共同性などの用語が至るところに現れるとなると、どうも相当に特殊な本であることが明らかになってきます。そして、このような術語を前にして、単行本版を読むのをやめてしまった(棚に戻した)人も多いのではないでしょうか。
さらにやっかいなことに、本書は独特な理論を前提に書かれているにもかかわらず、方法論的な記述がほとんど見られません。単行本版のまえがきでは、「方法に関する主題的な論及は、別の機会に譲るほかないだろう(17頁)」と書かれているものの、私が知る限りでは、宮台氏がその後、『サブカルチャー神話解体』の方法論について論じたことはありません。(なお、このような明示的に述べられていない方法論を再構成することこそ、上野千鶴子氏が文庫版解説で行おうとしていることです。)
要するに、『サブカルチャー神話解体』は、非常に野心的な目標を立てているがゆえに、議論が独特なものとなっている。にもかかわらず、その独特な議論の前提をなす方法論についての記述がない。そのため、読者を遠ざけることにもつながっているように思われる。こんな感じです。(つづく)
〔続きは以下