『表現者 2007年 03月号』にて、 西部邁×宮台真司×寺脇研×八木秀次の座談会「国体なき教育改革とは何か」が載っていたので立ち読み。
とにかくリズム感のある対話だった。「教育基本法改正」の批判からはじまって教育思想のディテイルを検討するという内容で、特に西部×宮台の間で、徐々に論理が整理されていく様は見もの。
(中略)
てなわけで、昨今の「教育問題」問題や「国体」論の現在に興味のある方はどうぞ。
というchikiさんの紹介につられて、『表現者』を買ってきてしまいました。
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chikiさんが紹介されている座談会の中で、私にとって不快だったのは宮台真司氏による次のような一連の発言です。
〔安全保障に関する〕こうした理路を知らぬ政治家や官僚の増大が僕のいう劣化です。
こういう政治家や官僚あるいは自称左右を一掃するためにこそ、日の丸・君が代・天皇のシンボリズムを使ってパトリへの貢献を唱導する。
「パトリへの愛ゆえに売国政治家や国賊官僚を討ち殺せ。基本法に愛国が盛り込まれればそう教えられるのでうれしい」と前の」小阪憲次文科相にラジオで言ったら、凍っていた。これが自称右とは情けない。(25頁)
旧制山形高等学校で恐れられた教員がいた。朝礼の際、列を乱した生徒をぼこぼこにして全体を威嚇した後「予備練を志願するものは一歩前に出よ」と宣うた。仕方なく父は一歩前に出た。
だが、こいつが敗戦後に豹変。戦後教育に貢献して県教育界を上り詰めた。
こいつが愛国者か。こういうニセ愛国者をぶっ殺してこそ愛国者だ!(39頁)
宮台
家族や地域や社会を構成すべき「ひとかどの人物」などに一切関心がない。そんなことを気にしていたら中国やインドや韓国との勝負に生き残れないと〔経団連は主張する〕。
言い換えれば、日本社会に貢献することに関心をもたないグローバル企業化へと脱皮しない限り生き残れない。だから脱皮する。
経団連よ、それでいいのか!
西部〔邁〕
俺に怒るな(笑)。
宮台
パトリでなく、企業エリートの生き残りしか考えない売国企業を、ぶっつぶせ!(43頁、以上強調はすべて引用者)
座談会内で宮台氏は、先行き不透明な今だからこそ、多様性と自己決定を地域レベルで強制すべきだ、という持論を繰り返しています。それも一理あるかなと思います。いずれにしても、この座談会での断片的な発言だけでは、なんとも言えません。
とにかく、建設的な議論につながりそうなことを言っているところに現れるのが、上の「討ち殺せ」発言です。こういうことを言う人だということは分かってはいますけど、やっぱり「殺せ」などと安直に言い、しかもそれを印刷媒体に載せてしまう人の議論に耳を傾けたくなるかといえば、率直に言って答えはノー。
そういえば、宮台氏は『サブカルチャー神話解体』の中で次のように述べていました。
単なる「事実史」でもアドホックな「好きもの分析」でもなく、浮遊する「煽りの言説」でも退却的な「繭的言説」でもなく、学術と名づけられた「内輪の言説」でもないような「自分自身を社会学的に啓蒙する言葉」に、そろそろ私たちは到達するべきではないだろうか。(文庫版63頁)
最近の宮台氏の著作を読んでいないのでよく分からないのですが、ひょっとして宮台氏は「自分自身を社会学的に啓蒙する言葉」ではなく、「煽りの言説」を表明することを自分の役割と考えるようになったのかもしれません。
とにかく、はっきり言っておきたいのは、上で引用したような座談会での発言は、人を煽ることはなく、まして啓蒙することは絶対にないということです。
なんて記事をブログにあげている時点で、私自身は実は煽られてしまっているわけですが…。無視しておくのが一番ですね、はい。