小田実訳:イーリアスの新訳

すばる 2007年 07月号 [雑誌]

すばる 2007年 07月号 [雑誌]

 なんと今月号の雑誌『すばる』には、小田実氏による『イーリアス』第1巻の翻訳を掲載されています。小田実氏は東京大学西洋古典学を専攻しているので、ホメロスギリシア語で読むことができるのですね。

 冒頭部の部分は以下の通りです。暇な人は呉訳や松平訳と比較してみましょう。さらに暇な人はギリシア語と。

怒りを歌ってくれ、女神よ、ペーレウスの子アキレウス
破滅の怒りを。それはアカイア人に数知れぬ苦しみをもたらし、
雄雄しい勇者の魂をあまた冥王のもとへ送り、
残されたむくろはただ犬ども、あるいは、
ありとあらゆる鳥どもの餌食となった。

 しかしこの新訳、残念ながら完結することはないようです。

私は今病床に伏している。手術不可能の末期ガンなので、英語で言うなら"His days are numbered"の状態にいる。
(中略)
来年春に完了を目指してギリシア語から訳してきていた(Oxford Classical Textによる)ホメーロスの「イーリアス」の第1巻Aを、完訳は間違いなくかなわないので、「すばる」に掲載させていただくことにした。学者の訳とはちがった文学者の訳も意味があると考えるので(136頁)。

 残念です。