ケプラー、「新年の贈り物あるいは六角形の雪について」

  • ヨハネス・ケプラー、「新年の贈り物あるいは六角形の雪について」、榎本恵美子訳、『知の考古学』、11、1977年、276-296頁。

 天文学での業績で知られるケプラーですが、実は現在でいう結晶学について最初に体系的な考察をめぐらせた人物でもあります。この小品は、雪の結晶がどうして六角形をとる理由について考察したものです。

 考察のすえに最終的にケプラーが到達するのは、大地がもつ形成力のために雪の結晶は常に一定の形状を取るというものでした。

 ちょうど、人間の魂と精気の関係のように、大地のからだには形成能力が存在し、それの運搬者が蒸発気なのです(291頁、訳文少し変更)。

 ケプラーによれば、大地には職人的熱存在します。この職人的熱の作用の結果、蒸発気が生まれます。蒸発気が大地の形成的能力運びます。この形成的能力は、創造の際に神から大地に与えられたものです。神は幾何学の原理にしたがって世界を創造したため、この形成的能力も幾何学的力を持ちます。蒸発気が冷やされて雪となる際、蒸発気中に大地の形成的能力が存在するため、雪の結晶もまた、幾何学的構造を持つことになります。すなわち、六角形の構造を持つわけです。

 うん。何のことか分かりません。しかし、ケプラーは大地の形成力を用いて、硫酸塩、硝石、ダイヤモンドがもつ幾何学的構造を説明しようとします。また、最終的には地上で生起するすべてのことがらを、この原理から導こうとしているようです。

参考