折衷主義、人文主義と初期近代の哲学、セネカの『自然論集』研究

  • John M. Dillon and A. A. Long (eds.), The Question of "Eclecticism": Studies in Later Greek Philosophy (Berkeley: University of California Press, 1988).
    • 折衷主義的として軽んじられがちな紀元前1世紀から紀元後2世紀までの哲学の再評価を目指す論文集です。面白いのが冒頭の Donini の論考。18世紀に哲学史に関する大著を執筆した Jacob Brucker は折衷主義を特定の教説に固執しない優れた態度として賞賛しました。彼が折衷主義者の例として挙げる哲学者は以下の通り。ブルーノ、ベーコン、カンパネッラ、ホッブズデカルトライプニッツ、トマジウス。折衷主義者デカルトと言い切れる折衷主義観が過去にはあったのですね。
    • プラトンアリストテレスストア派エピクロス派、懐疑主義、新プラトン主義という哲学体系から多少なりとも外れる思想家の歴史的重要性を評価しようとする点で、本論文集は画期的なものだ(or だった)と思います。折衷主義者の典型例であるガレノスとセネカにそれぞれ一章割いてくれればなおよかった。ただガレノスについては Moraux の著作で補完可能のようです。
  • Jill Kraye and M.W.F. Stone (eds.), Humanism and Early Modern Philosophy (London: Routledge, 2000).
    • リプシウスを扱った論文が一本収録されています(91-106)。が、たいしたことは書かれていません。
  • Bardo Maria Gauly, Senecas Naturales quaestiones: Naturphilosophie für die römische Kaiserzeit (Munich: Beck, 2004).
    • これはなかなかよいです。セネカ研究者必携。
  • Ernst Bernert, "Seneca und das Naturgefühl der Stoiker," Gymnasium 68 (1961): 113-124.