トマス・アクィナスによるアリストテレスの神の解釈

 トマスの解釈によると、アリストテレスにとって世界は永遠に存在するものである。これは世界にはじまりがあると考えるキリスト教の教えに反している。
 しかし一方でトマスは、アリストテレスの神は世界の存在の原因であると考えていた。したがって、アリストテレスの神は事物の運動の原因ではあるが、存在の原因ではないと考える人々は間違っているとトマスは主張する。
 アリストテレスの神が事物の存在の原因であるとトマスが考えた理由の一つが、『天について』第1巻の「自然と神はなにも無駄なことをしない」という言葉である。この言葉からトマスはアリストテレスの神は天体の製作者(factor)であるという結論を導いている。
 ただしトマスはアリストテレスの神について、「創造する(creare)」という単語は用いていない。また事物が神によって引き起こされる(causatus)と述べるときも、「無から(ex nihilo)」という単語は用いない。