挿絵と絵師

  • Pamela H. Smith, “Art, Science, and Visual Culture in Early Modern Europe,” Isis 97 (2006): 83-100.

 初期近代における科学と技術(芸術を含む)を扱った研究です。「科学革命を引き起こした重要な要因の一つには職人の存在があった」という著者の年来のテーゼを新しい文献を紹介しながら繰り返しています。だから研究というよりは、紹介?いや、紹介というよりかけ声と言った方がよいかもしれません。

 印象的なのは実際に挿絵を描いた人物に着目すべきじゃないかと提起した冒頭部分です。たとえばヴェサリウスアグリコラの著作を分析するとき、そこに描かれている挿絵に注目することがあったとしても、たいていは挿絵はあくまでヴェサリウスアグリコラの作品の一部としてのみ分析されます。結果として実際にその挿絵を描いた絵師が着目されることは少ないです。

 私が読んだ作品の中でも、ケプラーキルヒャーの作品にはたくさんの絵が出てきますし、デカルトの『世界論』にも有名な渦巻きをはじめいろいろな挿絵があります。あれって誰が書いたのかな?デカルトはどういう風に絵師に注文を出していたのかな?