混交研究その23 - 『一致と不一致』の第2版

 先日は1636年に出された『自然学問題集 Hypomnemata physica』を見るにとどめていたのを、今日は1629年に出された『一致と不一致』の第2版を調べました。

 1619年に出された初版にはなく、第2版から挿入された箇所で、混交に関するアヴェロエスの意見が否定されています。そこでゼンネルトは自分がかつてアヴェロエス(とザバレラ)の学説を支持していたことを認めています。しかし彼曰く、自分はすでに元素が混交中で無傷のまま保存されるというフィロポノス、アルベルトゥス、ツィマラ、アヴィセンナ、フェルネルの見解に賛同するようになっているそうです。

 ここから確実に分かることは、ゼンネルトが少なくとも1629年の段階までに、コインブラの生成消滅論注解を読んでいたことです。というのも、彼が形相の保存説の支持者として名前を挙げている人物たちは、生成消滅論注解で挙げられている人物と同一だからです。さらに決定的な証拠としては、コインブラの注解に現れる言葉がそのまま引かれているということです。このようなコインブラ注解の利用は初版には見られません。

ではなぜゼンネルトはコインブラ注解を第2版で利用しようと考えたのでしょうか。問題の性質上確かなことは分かりません。しかし可能性が高いのは1621年に出されたバッソンの著作を読んだことがきっかけとなったということです。

 この可能性の傍証となるのが、ゼンネルトが1636年の『自然学問題集』で展開する混交理論です。…がこれはまだうまく書けないので、後日。

用いた資料

  • Daniel Sennert, De chymicorum cum Aristotelicis et Galenicis consensu et discensu (Wittenberg, 1619).
  • Daniel Sennert, De chymicorum cum Aristotelicis et Galenicis consensu et discensu, 2nd ed. (Wittenberg, 1629).
  • Commentarii Collegii Conimbricensis Societatis Iesu, in libris de generatione et corruptione Aristotelis (Mainz, 1606; repr. Hildesheim: Olms, 2003).