混交研究その24 - アルシュテッド

 アルシュテッドの『調和的自然学 Physica harmonica』を調べました。アリストテレス主義の自然学を解説した第3巻で混交の問題が扱われています。そこでの彼の解説はスカリゲルに完全に依拠したものになっています。その終盤で彼は次のように述べます。

元素の形相は混交の中で損なわれないまま残ることはない。元素の形相は上に降りてくる[混交体の]形相と混交して、その形相によって完成させられる。そしてその形相によって含まれる。それは四角形が五角形に含まれるようなものである。そのため、犬はその大部分が土から成っていなければならなかったので、神は犬の魂を次のようなことが可能なようにつくった。すなわち、犬の魂は一定の質の調和状態の下では、土の形相を完成させ、また土の形相が自らと結合すると同時に、他の元素の形相と混交し結合するようにすることができる。というのも、元素が持つ形相は、混交して分離するという本性を持つと私たちは主張するからである。

 この考えはスカリゲルに忠実に従ったものか。うーん。混交体中で元素の形相自体が混交するという考える点では正しいです。しかしここで言われる五角形と四角形の話は微妙。この議論は四角形関係の話はトマス・アクィナスがどこかで言っているようです。で、これをスカリゲルは確かに発生論では持ち出してきます。でも確か彼はそれを支持してはいなかったような…。いや、発生論をちゃんと勉強しないといい加減なことしか言えませんね。

 とはいえ、アルシュテッドが少なくともバッソンやゼンネルトよりもスカリゲルの議論を正しく把握していたとはぎりぎり言えそうです。

用いた資料

  • Johann Heinrich Alsted, Physica harmonica, 3rd ed. (s.l., 1616), p. 131 (bk. 3, ch. 1).