Long Commentary on the De Anima of Aristotle (Yale Library of Medieval Philosophy Series)
- 作者: Averroes,Richard C. Taylor
- 出版社/メーカー: Yale University Press
- 発売日: 2009/10/20
- メディア: ハードカバー
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アヴェロエスの『「魂について」大注解』のラテン語訳の英語訳が出ました。なぜわざわざラテン語訳から訳すかというと、元のアラビア語は失われてしまっているからです。そのため完全な形で残っているのは13世紀につくられたラテン語訳と、そのラテン語訳を元に15世紀につくられたヘブライ語訳のみとなっています。
飛行機の中で序文(100ページ以上もある長いものです)を読み、合わせて関心のある箇所の翻訳と脚注に目を通しました。非常によくできた本だと思います。あんな難解なラテン語をなんとか意味の通る英語として訳せています。それに中注解との対応関係や残っているアラビア語断片との比較も脚注で丁寧に行われています。
興味深かったのは、知性単一論のソースとしてのテミスティオスを論じた序文の部分です。訳者のテイラーによれば、"productive intellect"を「形相の中の形相」と考えるテミスティオスの新プラトン主義的な側面に触発されて、アヴェロエスは人間の知性が単一である見解に統一されたそうです。この主張は事柄の性質上確たる証拠によって証明することができるものではありません。それでも仮説としては魅力的なものだと思います。