世界霊魂研究その23 一区切り

 非常にさっぱりした色気も何もない結論になってしまいました。

 カルダーノの世界霊魂論へのスカリゲルの批判を検討することによって、彼らが世界の秩序について根本的に異なる考えを有していていた事が分かった。確かに彼らは秩序の保存が最終的には神によってなされているという点では同意していたものの、神がそれをどのように実現するかという点については意見を異にしていた。カルダーノは神がこの目的を達成するために、天の力(これが「世界霊魂」と呼ばれる)を唯一の能動的原理として世界に与えたと考えた。この一元論的な図式をスカリゲルは否定した。というのも彼はこの図式では生成と運動がなぜ生じるかということが説明できないと考えたからである。スカリゲルによれば、一つの普遍的形相(universal form)を想定するのではなく、互いに独立した多様な形相が神に導かれることで秩序だった宇宙を生み出すと考えねばならない。形相の作用によって階層的に秩序づけられた世界というこの考え方は、アリストテレスの哲学によって裏付けられるだけなく、世界と人間霊魂の起源についてのキリスト教の教義とも調和可能なものだとスカリゲルは考えていた。

 多様な種類の形相がではどうやって世界を維持しているのかというのが、これ以降の章で扱われる課題になります。

 あと結論で書かなくてはいけないのは、カルダーノの熱=世界霊魂という考えはアリストテレス『動物発生論』に依拠したものなのに、スカリゲルが反論するときはそれをプラトン主義哲学からの派生物として見ているため、そこにすれ違いがあるということです。