- 作者: パオロニコローゾ,Paolo Nicoloso,桑木野幸司
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2010/04/01
- メディア: 単行本
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みなさんもご存知の斜塔堂こと桑木野幸司さんが翻訳した著作が出版されました。その名も『建築家ムッソリーニ―:独裁者が夢見たファシズムの都市』。500頁近い大冊です。内容紹介文を抜粋しましょう。
イタリアの都市を歩けば、どんな小さな町にも一つか二つ、巨大な公共建築が広場を睥睨している。モニュメンタルで無機質な合理主義建築が、圧倒的なメッセージを周囲に放ち続けている。これはいったい何なのか。
建築が権力を演出する効果的な装置であることは世界の歴史をひもとけばたちどころに了解できる。自らの政治体制を賛美するモニュメントの設計に嬉々として没入した権力者の事例には事欠かない。なかでも意図的に建築メディアが活用されたのがファシズム期のイタリアである。国民を一体化し、国威を発揚する格好の権力装置として建築は映画と並んでもっとも有効に機能した。
ヒトラーの建築政策については、多くの研究があるが、ムッソリーニやファシスト政権の建築思想についての研究はこれまであまりなかった。
本書は、ファシズム期イタリアの建築について通史的に語った、最新にしてほぼ唯一といっていい、画期的な著作である。これまで知られることのなかったムッソリーニの建築思想を明らかにし、統領(ドゥーチェ)が石のモニュメントに刻み込んだ、政治思想、信念、そしてユートピアが詳しく解説されている。独裁者はおのれの権力を緻密に設計・演出する建築家であった。建築史のみならず、イタリア現代史に関心のある読者にとっても刺激的な一冊となるであろう。
いや、確かにヒトラーが建築に精を出したと言う話は私ですら聞いたことがあるほどに有名な話ですけど、ムッソリーニについては何も聞いたことがありません。類書のない中でこれは今後の基本書として長く読まれることになるのではないでしょうか。
桑木野さんは2003年から2007年までイタリアのピサに留学し、同地で次の博士論文により学位を取得しています(bibliotheca hermeticaから引用)。
- "'Ut sapiens architectus' : giardino, teatro, città come schemi mnemonici nell’età moderna (XVI-XVII secolo)" tesi di dottorato, Università degli studi di Pisa, 2007.『賢キ建築家ノゴトクニ:初期近代の記憶術的シェーマとしての庭園、劇場、都市』
気鋭の建築史家による待望の翻訳ですね。皆さん書店で目にしたら是非一度手に取ってください。
参考リンク集
- 2010-05-01
- 訳者解説の一部と代表的建築物の写真が掲載されています。
- http://avocadodip.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-8db3.html
- こちらにも写真が。いやぁ、これは確かに独特ですね。
- http://d.hatena.ne.jp/sleepiness/20100526/1274887119
- 「もうね、ムッソリーニの人を信用しないという気質に起因した行動がすごい、とにかくなんにでも首を突っ込むし口を出す」。
- 書評clip:パオロ・ニコローゾ著「建築家ムッソリーニ」
- 「その意味で、ムッソリーニは建築のために生き、建築によって命を落としたのかもしれない」。
- 女性の女装? ( その他芸術、アート ) - 風船子、迷想記 - Yahoo!ブログ