Bos, Aristotle on God

 万物の生みの親であるところの神の力が生命原理たるプネウマによって全世界に浸透し、このプネウマが月下界の四元素と様々な比率で混合する。この比率の違いが月下界で生まれる生物種が高次のものであるか低次のものであるかを決定する。ここで神が世界の事物に生命原理を付与するという事象は、男性の精液が女性の月経血に生命原理を与える構図とパラレルである。この点でアリストテレスの世界観は生物学モデルに支えられている。

 私の理解した限りでは大体こういう主張がなされています。そしてもちろんとても信じられない。たとえば道具的体の解釈とか、『動物発生論』2巻1章の解釈とか無理筋に思えます。それでもこの論考が興味深いのは『宇宙論』が示す方向性でアリストテレスを読むことを徹底するとどのような議論が構築されるかという点を綺麗な形で示しているからです。この点でこの論考は『宇宙論』が偽作とまだ断定されていなかった時代のアリストテレス解釈に関心がある人こそ読んでほしいものです。

 あと新しい文献が英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、オランダ語に渡っていろいろ挙げられているので、最近の動向を知るにはうってつけです。だからやっぱり古代哲学研究者も読んだ方がいいな、うん。