辻「イスラーイーリーヤート理解」

 著者の辻さんから抜き刷りをもらいました。ありがとうございます。内容的には独自の調査に基づく研究というよりも、ある概念に対するいくつかの見解を紹介することで、これからのユダヤ教イスラム教研究が目指すべき方向の一つを指し示すというものになっています。

第二次大戦以降、イスラーム研究の主流は東洋学から地域研究へと転換した。それは一神教の伝統からイスラームを独立させる結果となり、ユダヤ教キリスト教イスラームの間の認識論的切断をもたらした。(中略)ユダヤ教キリスト教イスラームという同根の宗教を、それぞれ別個の宗教的・思想的真空状態において扱うのではなく、それぞれの相互影響を十分に考慮した学際的研究――一神教研究――が待ち望まれているのではないだろうか。

 著者によるこれからの研究に期待したいところです。

 しかしこの雑誌、かなり限られたところにしか所蔵されていません。Webcatで確認できるのは同志社大学と西南大学だけ。キリスト教学の牙城たる上智大学にも入っていないです。収録論文もCiNiiに登録されていないようです。もう少し成果の拡散に気を配ってもいいのではないでしょうか。