『客観性』読了
- 作者: Lorraine Daston,Peter Galison
- 出版社/メーカー: Zone Books
- 発売日: 2010/11/05
- メディア: ペーパーバック
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ようやく読み終えました。科学活動における視覚表現の変遷を追った著作です。とにかく様々な領域から多数の素材が集められているので、読んでいて楽しいですし学ぶところは多いです。史料集成としての価値は高いと思います。一方でここでダストンとギャリソンが提出している主張に同意するのは難しい。視覚表現の変化があったという事実の説明には成功していても、その解釈には失敗しているように見えます。これは彼らがその変化の原因を新しい観測機器の技術の出現に帰すことをかたくなに拒み、観測を行う科学者の自己規定の変化とパラレルにとらえようとしているからだと思われます。おそらく技術の発展の結果として表現が変化したという図式を避けようとしているのでしょう。しかしやはりそのような図式は存在しているように思え、そのためこれを徹底的に退けた彼らの記述はあちこちにひずみを生じさせています。
来週はこの本について書かれた書評をまとめて読むことにしています。