山田「ステノとキュビエの化石観」

  • 山田俊弘「ステノとキュビエの化石観:比較研究の試み」『亀井節夫先生傘寿記念論文集』2007年、259–267頁。

 ニコラス・ステノ(1638–86)とジョルジュ・キュビエ(1769–1832)の化石に関する洞察を比較することを通じて、両者のあいだに見られる共通性を取り出そうとする論考です。ステノは化石と現生動物の比較から、かつての動物のあり方を復元し、さらには地層ごとの化石の出現状況から地球の歴史を再構成しようと試みていました。キュビエはこの手法を発展させ、明確に定式化された原理に依拠して解剖学的な所見を動物のあり方の復元に生かし、そこから明らかにされる動物相の断絶から地球がかつて被ってきた大激変の歴史を再構成するということを行いました。

動物学がこの興味深い発見を負うのは解剖学なのです。それは、動物学が、これらの動物を外部からだけ観察しては完全には達成できない発見なのです。しかしここに、一見すると解剖学とはそれほど密接な関係があるようには見えないもうひとつの学問がありまして、それは地球の構造を扱い、地球の物理的な歴史の記念物を蒐集し、地球が経験してきた革命のありさまを大胆な筆致で描写しようとします。一言で言えば、この学問「ジオロジー」がその基礎となる諸事実のいくつかを確かなやり方で打ち立てることができるのは、ただ解剖学の助けがあってこそ、なのです(キュビエ「現生ゾウと化石ゾウの種に関する報告」より;262頁)。