The Cambridge History of Medieval Philosophy 2 Volume Boxed Set
- 作者: Robert Pasnau,Christina van Dyke
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 2009/12/17
- メディア: ハードカバー
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- Steven P. Marrone, "The Rise of the Universities," in The Cambridge History of Medieval Philosophy, ed. Robert Pasnau and Christian Van Dyke (Cambridge: Cambridge University Press, 2010), 50–62.
中世哲学の最新の教科書から、「大学の出現」と題された章を読みました。スコラ哲学の出現に重要な役割を果たしたとされる3つの文化的事象があります。その3つとは12世紀からの翻訳運動、新しい教育機関、そしてプロフェッショナリズムの出現です。最初の2つはおなじみなので、ここでは最後の1つだけ。12世紀までは統治するとか、モノを生産するとか、(ある程度までは)治療をするとかいう行為をするために特別な教育は必要ありませんでした。そのようなことが行われている環境に生まれ育ちさえすれば十分だったのです。しかし12世紀よりあとには、統治や商売や治療のための特別な機関が設立され、そこにはその分野の専門家が配置されることになります。たとえばイングランドでは1200年代半ばから、王権が権利主張や取引をする際に書き残された記録を提示することを強く求めるようになります。その結果、その種の書類を作成する技能を有する法律家が大量に必要になりました。このような制度は大陸でも広まるとともに、専門家へのニーズは法学のみならず治療、教育、キリスト教教義の解説のような分野にも生まれるようになります。一定期間の教育を受け、その分野の専門知を持つと認められた専門家が社会の要所要所を占めるいわば「合理化された」世界の中で、大学はそのような人材の供給源として機能することになります。
もう一つ、なぜ中世の神学者は哲学にあんなに深く関わっていたのかという点について。まず神学上の教義の解説を、アリストテレスがいうところの確実な知識として提示するためには、その内容についても議論の形式についても哲学を参考にする必要がありました。第二の要因は、大学のなかで神学部がその他の学芸、法学、医学部のなかで高い地位を占め続けるためには、そこで生産される議論は他の学部でのそれと同じように厳密でなくてはならず、かつ他学部で生み出される知識と整合的でなければならなかったということです。こうして神学はその議論形式にかんしても内容にかんしても哲学に強く依存することになりました。
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