18世紀の大学における哲学教育 Hochstrasser, "The Institutionalisation of Philosophy"

The Cambridge History of Eighteenth-Century Philosophy 2 Volume Paperback Boxed Set

The Cambridge History of Eighteenth-Century Philosophy 2 Volume Paperback Boxed Set

 18世紀の主としてフランスとドイツにおける大学での哲学について論じた論考です。題材が一筋縄ではいかない複雑さを備えているがゆえに論述もすっきりしたものではありません。しかし18世紀の哲学の推移を歴史的に理解しようとするなら、この論考(なり同種の文献)を味読することは避けて通れないように思えます。

 大筋として、1789年以前の大学での哲学教育は中世以来の教科書、教授法を基本にしながらも、新たな要素が徐々を取り込んでいくものと理解することができます。しかしその取り込みの形やペースがフランスとドイツでは異なっていました。フランスでは哲学のうち、論理学、倫理学形而上学の分野での教育内容が保持される一方で、自然哲学の領域では数学化と専門化が進みました。このため大学教育は断片化します。しかもフランスでは大学外の数多くのアカデミーの活動が、哲学教育の多極化を推し進めました。他方ドイツでは、領主たちが神学部から哲学部への干渉を排除し、さらに諸学問を統制する哲学というカント的理念が制度改革によってどういうわけか実現したため、哲学に特権的な地位が残されました。