アレクサンドロスの発生論 Sharples, "On Body, Soul and Generation in Alexander of Aphrodisias"

  • R. W. Sharples, "On Body, Soul and Generation in Alexander of Aphrodisias," Apeiron 27 (1994): 163–70.

 アフロディシアスのアレクサンドロスの生成論を扱った論文です。シンプリキオスの『自然学註解』(310.25–311.19)で報告されているアレクサンドロスの生成論では、精液が与える力が変化を引き起こして、それが最終的に目標となっている生物の形相に到達するという書き方がされています。これは親から子に形相が伝達されるという考えを否定しているように読めます。あたかも機械論的に最初の衝撃が物理的な過程を経て生産物をつくりだすとしている点で、反アリストテレス的に見えるのです。これにたいしてアレクサンドロスが当該箇所で形相の伝達を論じなかったのは、元の『自然学』で最終的な到達点としての範型(パラデイグマ)が問題となっていたからにすぎないとします。アレクサンドロス本人はやはり親から子への形相の伝達を認めていたと言います(たとえば『形而上学註解』428.24)。