ローマ人の過去 島田「過去の記憶と「記憶の断罪」」

 古代ローマに存在した記憶の断罪という制度から、ローマ人がいかに過去の歴史を知っていたのかを考察した講演録です。第2代皇帝ティベリウスの時代に制度として確立した記憶の断罪(ただしこの単語自体古代にはない)では、その罰に処せられた人物の葬儀が禁止され、その人物の事蹟を顕彰するために建てられた記念建造物が壊され、彫像がとりのぞかれ、肖像(マスク)の補完が禁止され、その名前を子孫が受け継ぐことが禁止されました。逆に言えば、ローマの人々は過去を知るときに単に歴史書や記録を手にとるだけでなく、これらさまざまなメディアにアクセスしていました。記憶の断罪が抹消しようとしたさまざまなものが総体として過去の記憶を構成していたと言えます。