科学史の若い時代 広重「科学史に何を求めるか」村田「論証的学問の成立」

  • 広重徹「科学史に何を求めるか」、村田全「論証的学問の成立」広重編『科学史のすすめ』筑摩書房、1970年、3–13、15–71ページ。

 1970年に書かれた科学史入門書を手にとりました。冒頭の二つの文章で広重と村田がそれぞれ科学史学について論じています。広重は科学史(というかおよそ歴史学一般)では過去に自分を同化させること同時に、その過去への接近にさいして必要となる問題意識を持つために現代への鋭敏さをもつことが要請されると言います。村田は科学史が科学と歴史という二つの分極を持っており、前者にウェイトを置くと内的な科学史に、後者にウェイトを置くと外的な科学史になるとしています。また歴史を眺める立場と組み立てる立場の区別も面白い。眺める立場で科学史を行うとは、ある知識が得られた過程をとうことなく、その知識内容やその知識が当該社会で果たした役割を論じることです。一方組み立てる科学史とは知識が得られた過程を問題とし、そこから従来の定説を覆そうとする批判的な志向を持つとされます。

 広重が科学史が科学教育に役立つとしても、そもそもその科学史についての知識があやふやであっては何の意味もないとして、まずは科学史を自立的な学問としてたてねばならないとしていることもメモ。