『地質学の原理』への反応 Rudwick, Worlds Before Adam, ch. 27

Worlds Before Adam: The Reconstruction of Geohistory in the Age of Reform

Worlds Before Adam: The Reconstruction of Geohistory in the Age of Reform

  • Martin J. S. Rudwick, Worlds Before Adam: The Reconstruction of Geohistory in the Age of Reform (Chicago: University of Chicago Press, 2008), 393–406.

 長きにわたったライエル理論の解説が終わり、『地質学の原理』への地質学者たちの反応があつかわれます。ブエ、コニベア、デ・ラ・ビーチ、スクロープらの評価が通覧されるのですけど、基本的にみな同じことを言っています。長きにわたって事実の収集ばかりに専心してきた地質学に、かつてのビュフォンが試みたような理論構築への挑戦が帰ってきた。しかも以前よりはるかに強固な経験的な根拠に基づいて。特にライエルによる現在因の網羅的な検証は重要であり、これにより従来は現在世界で作用している原因からは説明できないと考えられてきた事象の多くが説明できることがあきらかとなった。このような大きな前進を示しているにもかかわらず、『地質学の原理』はその根本的なテーゼにおいて受け入れがたい。それは地球上の痕跡からうかがえる過去の事象はすべて現在因から説明できるとし、また地球史には定向性はなく、定常的な循環が見られるだけだと主張している。これらの主張には経験的な根拠がないか、経験的な反証が見いだされるというのです。ライエルにたいする地質学者たちの対応の数々をこれほどまでに著者がとりあげるのは、批判者たちが(しばしば描き出されるように)奇跡の観念を手放さない信仰にとらわれたものであったとか、自然法則の定常性を認めない非科学的な人々であったとかではなく、彼らの議論もまた充分に経験的な論拠に基づいていたことを示すためであったと思われます。