自然を再現する図像 Rudwick, "Picturing Nature in the Age of Enlightenment"

 ラドウィックが2004年にフィラデルフィアでおこなった講演をもとにしたエッセイです。野外での調査活動で得た情報や標本もとに屋内の博物館で研究することが自然誌の基本です。このときすべての標本の現物を一箇所に集め万人が即座にアクセスできるようにするのは無理ですし、そもそも地層や火山は移動させることができません。そのため屋外の自然の代用(proxy)となるべく、多種多様な図像表現で自然を描写することが行われました。こうした図像の幾種類かが実例を交えながら解説されています。内容としてはBursting the Limits of Time (Chicago, 2005)に書かれていることの一部を、より一般的な聴衆にむけて語りなおしたというもので、彼の著作に親しんでいる者にとってはとくに目新しい点はないと思います。明晰で読みやすく、それでいて味わいのある文体をながめて楽しみました。

 ラドウィックといえば最近『化石の意味』が新たに訳し直されて出版されました。あらたな訳者による充実の解説も付されていますのでぜひ入手しましょう。

化石の意味―― 古生物学史挿話

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