大デボン紀論争 Rudwick, “The Group Construction of Scientific Knowledge"

The New Science of Geology: Studies in the Earth Sciences in the Age of Revolution (Variorum Collected Studies)

The New Science of Geology: Studies in the Earth Sciences in the Age of Revolution (Variorum Collected Studies)

  • Martin J. S. Rudwick, “The Group Construction of Scientific Knowledge: Gentlemen-specialists and the Devonian Controversy,” in The Kaleidoscope of Science, ed. E. Ullman-Margalit (Dordrecht: Reidel, 1986), 193–217 [repr. in Rudwick, New Science of Geology: Studies in the Earth Sciences in the Age of Revolution (Aldershot: Ashgate, 2004), article XIII].

 ラドウィックの『大デボン紀論争』の方法論的前提と、調査結果をごくごくかいつまんで述べた論考である。1834年から42年まで続いた論争のなかで、デボン紀という時代区分が地質学に生まれた。この区分が形成されるにあたっておこった論争の様子をつたえる膨大な書簡が残されている。後の回想や出版された論文より、はるかに正確にその時点での科学者たちの立場を伝えてくれる史料だ。この史料やフィールドノート、出版された論考などを駆使することで、論争の過程のなかでいかに「デボン紀」という当初は予想もされていなかった時代区分が生みだされるにいたるかを解明したのが上記の『大デボン紀論争』である。またこの本はつぎのようなテーゼを論証するための事例研究ともなっている。すなわち科学理論とは、自然界からのインプットに規制されながら科学者たちが集団作業によってたちあげていくものだというテーゼである(Collinsのコア・セットのアイディアが援用されもする)。より正確にいうなら、このテーゼを認めるとして、ではその集団作業のなかでそれぞれの科学者はどのような立ち位置をしめ、その立ち位置の違いによってどのように果たす役割がことなってきて、それらの異なる役割がからみあうことで、いかに新たな革新的アイディアが生まれるかということを調べた事例研究だ。とはいえ、サマリーだけを読んでもこの研究の力強さは伝わってこない。やはり本自体を手にとる必要があるだろう。