ピコ・デラ・ミランドラのカバラ的占星術 Rutkin, “Giovanni Pico della Mirandola’s Early Reform of Astrology"

  • H. Darrel Rutkin, “Giovanni Pico della Mirandola’s Early Reform of Astrology: An Interpretation of Vera Astrologia in the Cabalistic Conclusions,” Bruniana e Campanelliana 10 (2004): 495–98.

 『予言占星術論駁』執筆以前のピコ・デラ・ミランドラがいかなる占星術観を持っていたかを検証する論文である。『900の論題』のうちでピコは次のように書いている。

他のカバラ主義者たちがなにを言おうと、私は10の天球は10の数に対応していると言う。[神による]建造物[であるこの世界]からはじまり、木星は4番目[のセフィロート]に、火星は5番目に、太陽は6番目に、土星は7番目に、金星は8番目に、水星は9番目に、月は10番目に対応するのだ。建造物[たるこの世界]のうえでは、大空[恒星天]が3番目に、第一動者が2番目に、浄火天が10番目に対応する。

十戒が真の占星術という接合によって真の神学と対応していることを知るものは、(たとえ他のカバラ主義者たちがなにを言おうと)先述したわれわれの結論という基礎から次のことをみてとるだろう。すなわち第一の戒めは第一の数[セフィロート]に、第二の戒めは第二に、第三の戒めは第三に、第四の戒めは第四に、第五の戒めは第五に、第六の戒めは第六に、第七の戒めは第九に、第八の戒めは第八に、第九の戒めは第七に、第十の戒めは第十に対応するのだ。

七つの惑星と恒星天、第一動者、浄火天のあわせて10の天の存在は、カバラの10のセフィロートに対応している。この対応を明らかにするのがピコの真の占星術(vera astrologia)である。この対応からは新たにセフィロート十戒との対応も導かれるという。以上のようなそれぞれがそれぞれに対応する天、十戒セフィロートの10の部分に、人間はおのれの魂の各能力を適合させねばならぬとピコは議論を進める。こうして地上とより上位のものども(天、十戒セフィロート)との結合がなしとげられることにより、人間は神へと上昇していくのである。ピコが唱えている占星術は、従来の占星術とはかけ離れている。天の事物をセフィロートと対応にされることで、人間の上昇の道がひらくという、いわばカバラ的触媒の役割を彼の占星術は果たしているのである。

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