中世から初期近代にかけての占星術史を研究するダレル・ラトキン博士の講演会に参加してきました。60人を超える聴衆が会場を埋め尽くした光景からは、占星術がいまでもなお強い求心力を持っていることがうかがえました。
講演者のラトキン氏は、インディアナ大学のウィリアム・ニューマン教授のもとで、1250年頃から1700年にかけての占星術の歴史を、とりわけピコ・デラ・ミランドラの占星術批判に焦点を当てながら考究した博士論文を執筆しています(2002年)。その後各種学術雑誌や論文集に精力的に論考を投稿・寄稿しながら、大きなプロジェクトとしてピコの『判断占星術論駁』の英語訳と、中世から1800年代にいたるまでの占星術史の包括的な通史を準備しています。占星術史研究の歴史を塗りかえようとしている研究者といえます。
本講演は占星術の基本的前提から話をおこし、中世におけるアリストテレスの自然哲学との結合を経て、ガリレオ・ガリレイやフランシス・ベーコンによる占星術の実践やその改革提唱の挿話に触れながら、最終的にアリストテレス自然学の崩壊とともに占星術が正当な学問分野とみなされなくなるまでの歴史をたどるものでした。時間の制約もあり、こみいった議論や歴史的経緯の原因についての本格的考察は省かれているものの、占星術に関心のある方には一聴の価値がある講演であったと思います。講演後の質疑応答にも興味深いものがありました。講演の模様はyoutubeにアップされているのでぜひご覧ください(残念ながら途中に2分ほど欠落があります)。また英語での発表の一つのモデルとしても参考となると思います。「ラトキン博士の講演はこの分野が専門でなくても一聴の価値があります。非常に良く構成された英文を流麗に読む氏の発表は目指すべき英語発表の一つの理想だと思います」(KM; https://twitter.com/kosuke64/status/360405981282308097)
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- http://d.hatena.ne.jp/nikubeta/20130723/p1
- 本講演のロング・ヴァージョンともいえる優れた概説です。