Worlds Before Adam: The Reconstruction of Geohistory in the Age of Reform
- 作者: M. J. S. Rudwick
- 出版社/メーカー: Univ of Chicago Pr
- 発売日: 2010/05/15
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- Martin J. S. Rudwick, Worlds Before Adam: The Reconstruction of Geohistory in the Age of Reform (Chicago: University of Chicago Press, 2008), 423–36.
26章まででライエルの部はおわり、つづいてライエルへの挑戦や、彼とはちがう方向へ進んだ人びとの研究活動が論じられる。29章の主題はバックランドだ。バックランドは著作を自然神学の枠組みのうちで世に問うたために、しばしば科学と宗教の論争のうちの宗教側に属する人物とみなされてきた。この考え方はあやまりである。バックランドが支持していたような、自然にみられる高度なデザイン性に神の摂理をみてとることができるという意見は、当時の科学者のあいだでひろく支持を得ていた。彼らが否定していたのは、聖書の字義的解釈を科学上の真理とみなす立場であり、これを否定するという点ではバックランドも例外ではない。
バックランドは1836年の論文のなかでひとつの譲歩している。いぜんの彼はかつて激変を引きおこした巨大な洪水があり、これが聖書のノアの洪水と同一視できると主張した。しかしいまや最後の激変を引きおこした原因は創世記にある洪水よりもはるかに劇的であり、しかもその洪水以前には人間がいなかったと考えられる証拠が集まっていた。そのためバックランドは最後の激変の原因と聖書の洪水を結びつけることを放棄することになる。
同じ論文のなかでのバックランドの論旨は、当時ますます精密さを増していた層序学にしたがって、キュビエのモデルに忠実に地球史をえがくというものだった。生物種は時間にそって定向的に消えては現れていく。それぞれの種はそれが住む環境に適合している。だからラマルクのように種が不完全な状態から完全な状態に進化していくことはない。環境の変化にともない、生物種が(後もどりできないかたちで)現れては消えていくのが地球史だとバックランドは主張した。