錬金術の秘密の終幕 Principe, The Secrets of Alchemy, Epilogue

The Secrets of Alchemy (Synthesis) (English Edition)

The Secrets of Alchemy (Synthesis) (English Edition)

  • Lawrence Principe, The Secrets of Alchemy (Chicago: University of Chicago Press, 2012), 207–210.

 エピローグである。錬金術は一貫して手と頭をともに使う営みであった。それは原理を欠いた試行錯誤でもないし、単なる思弁でもない(が時としてそのように言われてきた)。同時に錬金術は生産的な営みであった。それは物質的にさまざまな産物をつくりだすだけでなく、自然世界に関する知識をも提供した。その自然世界は神を中心に多様な領域とつながっていたがゆえに、錬金術もそれらの諸領域と結びつきを深めていた。科学、医学、技術の領域だけでなく、芸術、文学、神学、哲学、宗教といった領野と関わるのはそのためである。だが同時に錬金術は自然哲学の一部であり、その意味で自然を理解し、操作し、利用しようとする人間の営みの歴史の一部、つまりは科学の歴史の一角を占めるのである。