アルベルトゥス・マグヌスの研究をしている人の発表を聞きました。テーマは『精気と呼吸について』というアルベルトゥスの論考です。
アルベルトゥス・マグヌス(1200頃‐1280)というのは、トマス・アクィナスという人の師匠にあたる人で、自然哲学について多くの論考を残したことで有名です。
それで、この弟子のトマス・アクィナスという人の方がはるかに有名で、この人は「スコラ学の大成者」として紹介されることが多いです(その紹介が現在の研究から見て正当なのかどうかは知りません)。
要するにアルベルトゥス・マグヌスという人は中世スコラ学者なのです。
そんなアルベルトゥスの『精気と呼吸について』に関する発表でしたが、論文でやりたいことは以下の三つとのこと(あくまで僕なりのようやくです)。
- 自然と技術を類比的に考えるという思考のパターンが、アルベルトゥスの他の著作で認められる。同じ類比の思想がこの『呼吸と精気について』でも見られることを示す。
- この論考の一つのキータームは形成的能(virtus formativa)という言葉だが、この言葉は後の時代になっても使用されている。ひょっとしてアルベルトゥスが後の時代の人たちのソースになっているのではないのか。このことを示す。
- アルベルトゥスがこの論考で論敵としてしているのが、イスラムの哲学者であるIsaac Israeli(c. 855-c. 955)という人物の『定義の書』であることを示す。