ヴォルテールその5

 高橋 安光 (1979), 『ヴォルテールの世界』, 未来社.
http://webcatplus-equal.nii.ac.jp/libportal/DocDetail?txt_docid=NCID%3ABN00267913

を読んでいます。なかなか面白い。
 欠点としては著者の顔が見えすぎるということでしょうか。導入部分ではそこがかえって面白いのですが、本論に入ったあたりからうるさく思えてきます。
 さらにヴォルテールの人生をおおざっぱであれ概観するということをしないでいきなり各論に入るので、これからヴォルテールに入ると混乱するかもしれません。ただし巻末にすばらしい年譜があるので、それで補うことが可能です。
 あと固有名詞を出しすぎなのも少々気になります。というか全体的に書きたいことをすべて書いたという印象で、話が直線的に進んでいきません。たぶん同じ本を今出したら、編集者から細部を削るように注文が出たと思います。

著者の高橋氏は他に研究書として

旅・戦争・サロン―啓蒙思潮の底流と源泉

旅・戦争・サロン―啓蒙思潮の底流と源泉

手紙の時代

手紙の時代

近代の雄弁

近代の雄弁

があります。どれも面白そうです。また翻訳書として

哲学書簡 哲学辞典 (中公クラシックス)

哲学書簡 哲学辞典 (中公クラシックス)

ドルバック 自然の体系〈1〉

ドルバック 自然の体系〈1〉

があります。また『一橋論叢』という雑誌に出した論文のリストがここにあります。高橋氏の論文としては

・セリュリエール『オランダにおけるピエール・ベール』 <書> 23-6,1950
エピクロスの復活 <論> 24-5,1950
・現代フランスの教育改革の理念 <紹> 24-6,1950
ヴォルテールにおける近代的歴史概念の構造 <論> 25-4,1951
・マレルブ小論 <論> 28-6,1952
叙事詩「ラ・アンリアード」 -作品研究- <論> 34-3,1955
ヴォルテール小説の発展 -『自然児』を頂点とする- <論> 38-6,1957
・フランス啓蒙運動と説教家たち <論> 43-6,1960
・デーヴィド・ディー・ビー著『カラス事件』 <書> 47-6,1962
・「シヴィリザシオン」原義考 <論> 55-2,1966
・悲劇『ジャン・カラス』覚書 <研> 80-1,1978
・「捨離」の思念 <論> 81-4,1979

があります。あとフランス啓蒙史観の系譜及び特質という大論文もあります。
 いや、しかしすごい研究者です。すなおに尊敬します。どんな人かはぜんぜん知らないんですけど。